Pandora Master’s Symphony Concerto No.3を終えて

およそ3か月の制作期間を経て催された「Symphony3」の二日間が、無事終わりました。
皆様、いかがだったでしょうか?
本当に、夢のような二日間であったと、週が明けた今も、そう感じています。

◆本番に起こった不測の事態

夢のような二日間。しかしそこには多くのトラブル、アクシデント、そしてドラマがありました。
実のところ、予定していた100%の状態を全員に披露できたかというとそうではありません。二日間の公演の自己評価を足して2で割って、だいたい60%~70%ぐらいの出来栄えだったかなと感じています。
十分に練習期間もありましたし、演出のデバッグ、調整も、当日直前まで行われていました。しかしながら、スタッフを含め80人という状況においては、やはりまったく意図しないトラブルが起こるもので、VRChatというプラットフォームにおいての、同時接続数の限界を見た、というのが実のところです。

今回の公演本番で私が一番苦悩したのは、様々なトリガー情報が、インスタンスのマスターである私に情報が伝播して届くのは、おそらく一番最後なのだろうということです。
なので実は、楽曲が開始されてから、私が実際に動き出すのは、4~5秒も遅れていた、ということです。これが顕著に感じられるのは、4曲目の「Blue Red Black」の時で、ここに至るまでで既に大量のトリガー情報を伝播し負荷が蓄積していった結果、最後4曲目でその遅延が顕著に現れた、という見解です。
これはスタッフ6名の時には知る由もなく、ライブ1日目で、なかなか楽曲が始まらないなと感じ、そこで初めて気が付いたのです。これはもしかしたら、私だけ遅れているのではないか、と。
とはいえ、聴こえている楽曲から約3小節分ぐらい前を脳内で流しながら動く、というのはいささか厳しく、結果、聴こえているままに動き続けました。
もしかしたら、その場にいる人全員が4~5秒遅れて見えているわけではなく、通信環境や、トリガー情報が伝播される順番によって、その遅延の度合いがまちまちだと思ったからです。
Day2では、そんなことを考えながら実はあのステージに立っていたんです。
現状Youtubeにアップロードされている動画は、私の動きが4~5秒程遅れていて、私的には実に致命的なんですね・・・。

ちなみに、Day1とDay2では、ゲストのクロイニャンの登場の仕方が異なります。
Day1はステージ前方から走って登場してきましたが、Day2ではステージにテレポートで登場します。実はこれもアクシデントによるもので、アドリブで機転を利かせたところでした。演奏中にも関わらず、どう対処すべきかを考案し、Discodeで登場の仕方を指示し、あくまでも自然に登場したかのように見えるようにしていました。
ちょっとしたドラマでしたね。クロイニャンには思わぬ負担をかけてしまいました。
他にも、1度しか送られないはずのMindMirage発動のトリガーが何故か複数回発動したりなど、トラブルは様々でした。その多くが「VRChatというプラットフォームの限界」というものを匂わせるものでした。

しかしそれでも、最後まで公演をなんとか通せたのは、演者の皆さんの機転と、不具合だというふうに感じさせないほどの、演出の情報量の多さによるものだと思っています。

◆これでもかと続く涙腺崩壊ポイント

楽曲、ワールド演出、パーティクル演出、どの分野においても、今回の公演内容には、涙腺崩壊させるポイントが非常に多いです。
みなさんのお話を聞いていて一番多かった涙腺崩壊ポイントは、2頭のクジラが空を飛んでいくところで、直前のMindMirageによって、「君はひとりじゃないよ」と暗号が解読され、本編では飛ぶことのなかった機械クジラが、青いクジラと共に、カラフルに弧を描いた線上を優雅に飛んでいきます。実にドラマチックな展開でした。
この演出は、制作初期の早い段階から組まれていて、あとからあらたか先生によるカラフルなアーチが描かれました。

他にも、ルクス君の名も無き墓や、Elpisの間奏部分でスターピースがグルグルまわるところなど。そこは、私とあらたか先生の間で演出に名前がついていて「ハウステンボス」って言っています。
元よりElpisはワールド側の演出がメインで、パーティクル演出は最小限で良い、という制作目安で動いていましたが、結果的には非常にパーティクルが良い仕事をしており、あらたか先生も大満足の幻想的な光景に仕上がっています。
アリアがフルートを吹き、めぐるがアリアを讃えるようにコーラスする躍動的なハウステンボスは、VRChat屈指の超美麗でドラマチックで、ファンタジックな光景だと思います。

◆待望のフル版楽曲と、ボーカル新録

Pandora ep.4公開時より、OP曲の「Elpis」という楽曲は、多くの旅人達の耳に残る印象的な旋律だったと思います。
Symphony3で、このフル版が出る。そう思っていた方も少なくないと思います。
ですがその期待の斜め上をいきました。ボーカルに「Pastel Tone Music」のruhaさんを迎え、実に素敵な歌声で楽曲を彩ってくれたのです。
ボーカルさんを探していて、私のひとめぼれでしたね。楽曲への熱い感想文をしたためて、その後、ご依頼出来ないか、とご相談させていただき、快諾いただきました。

そして、月と星の声の収録曲「Blue Red Black」は、オリジナルはUTAU音源の闇音レンリが歌っていたところを、今回、Symphony2の「Beyond the blue sky」でおなじみの月子さんに新しく歌唱していただきました。

どちらも非常にパワフルな楽曲で、胸をグイグイと突き動かしてくれる最高の楽曲になったと思っています。

歌詞にも注目です。特に印象的な歌詞をあげるとすれば、Elpisの「世界が泣いている」「失うだけの夢、抗え今」
ep.4を成し遂げた旅人達には痛恨の一撃だと思います。
歌詞世界も、とても事細かく綿密に、何もかも意味を持って書かれ、歌われているのです。
私の書く歌詞はどれもなかなか個性的な表現を用いています。見る人が見れば、Minaさんの歌詞かな?って思うくらいには、独特なんじゃないでしょうか。

◆とことん花を添えたパーティクル演出

パーティクル演出を組み込んでいくにあたって、あらたか先生と幾度となく確認をするのですが、今回はそれほどぶつかることはなく、例えて言えば、美味しいものに美味しいものを足したら、美味しいに決まってる、みたいな状況が生まれていたように思います。
とはいえ、やはりいくつかの演出は、ちょっと違うんじゃないかなぁとなってカットしたり、別のものに変わったりもしました。前述のハウステンボスもそうですね。
また、意図しない動きをしたパーティクルが意外と良くて、それが採用されたりもしました。Elpisのアウトロで光の線が無数に斜めにさしこむところです。あそこで私は上階の賢者達に4拍子の指揮をしているんですよ。

Pandora Labyrinthフルオーケストラでのパーティクル演出は、Symphony1のパーティクルのリメイクです。ここは敢えて、これまで辿ってきたものを尊ぶような気持ちで、あらたか先生の原点のようなものがそのまま活かされています。
しかしその後のElpisでのパーティクルで、これまでのものと全然異なり、粒子のひとつひとつが実に細かく、そして光り輝いていることに、気が付いた方も多いと思います。
さらに、Blue Red Blackの青白い氷の粒子も同様に、とにかくパーティクルの細かさにこだわってもらいました。実に幻想的な景色が広がり、パーティクルライブとしてのあるべき姿を再定義するかのような光景であったと思います。
激しい楽曲でありながら、その演出のディテールは非常に細かく、高精細なHMDであればあるほど、最高に美しいパーティクルの数々が見えたことでしょう。

昨今、パーティクルライヴが、一口に「パーティクルライヴ」と呼ぶにはいささか無理があるほど様々な技術が駆使されたものすごいライヴが作られていますが、その中で、パーティクルがパーティクルとして在り続け、世界に綺麗な花を添える、パーティクルの原点の追求、というところを意識して、あらたか先生に様々な指示を出しました。
それがつまり、パーティクル演出とワールド演出がうまく融合するために必要なことでもあったと思います。
パーティクルとは「粒子」のことです。これを120%思い出させてくれる演出が完成していると思います。忘れてはいけません。パーティクルとは「粒子」です。

◆ただ動く真似をするだけではない演者達

前述の遅延のトラブルはありましたが、それでも、演者それぞれの工夫したポイントや、特徴的な振り付けは数多くあります。
特に今回目を惹くのは、煉獄丸さんによる、アリアのフルート演奏でしょう。
VRChatで、フルートを吹く姿など、これまで見たこともありません。
軽快にステップを踏みながら、フルートを楽しそうに吹く姿。煉獄丸さんの日頃のフルトラによる活動の賜物でしょう。実は、フルートをアバターが持つには、一工夫必要で、普通に持つと、腕が体にめり込んでしまう問題があります。
なので、実際の持ち方とは多少異なっていても、出来るだけ見栄えする姿勢を維持しながらのステップを踏んでいるわけですね。
しかも驚きなのは、ワールド側の楽曲のタイミングに合わせて、アバターの表情の変化のアニメーションを起動しています。
これにより、フルートを吹きながら、様々な表情の変化を実現しているんですね。

このほかにも、バイオリンの演奏のために、実際に練習用のバイオリンをリアルで購入したKemomimi_kkoさん。ゲスト出演でありながらアバターにギターを組み込んでくれたクロイニャン。
そして、前回同様に、アバターの早い動きが省略されてしまう現状のVRChatに対抗するべく、実際にギターを弾くよりも大幅にオーバーリアクションで動かなければいけない私。
演者側も非常に多くのことをこなしているライヴなんですね。

◆さいごに

冒頭で、「だいたい60%~70%ぐらいの出来栄え」と書いていますが、それでも、達成感は非常に大きいです。このライヴを80人でいっきに行うなんて、もはやVRChat運営の想定の範囲外でのことでしょう、おそらく。
それでも、Symphony3は、現状のVRライヴの常識、定義をいっきにひっくり返すほどのインパクトがあると思います。これが無料で見れていいのか?と、何人かが仰るほどで、実際に、VTuberのライヴをいくつか見ても、これほどのものは到底お目にかかることは今後もしばらくはないことでしょう。
約一か月後くらいに、Symphony3の撮影班による、最高のカメラワークによるライヴ動画が公開されます。リハ時から撮りためている映像をあわせ、編集したものです。
それがこのVRの世界に広まった時、同じくライブ活動するクリエイター達はどんな気持ちで見るだろうか。
真似したくても、真似出来ない、唯一無二のライヴを目の当たりにして、ならば自分達には何が出来るだろう、と頭を悩ませるのではないだろうか。
悔しい部分もありますが、しかし、最高にしてやったり、といった気分でもあります。

そして、もしSymphony4を催す日が来るのだとしたら、それは、Symphony3をまたさらに超える、ということであって、結果的にSymphony3は、私とあらたか先生の首をさらにきつく絞めたということになるわけで、ハードルはあがっていく一方です。

既に、Project Campanellaとして、多くの企画が動いており、それに伴って、Symphonyが催される可能性は、非常に高いと思っていて。
Pandora、そして、幻想世界Stella。まだまだ目が離せない、MinaFrancesca発のコンテンツの数々。ぜひ、旅人の皆様に、これからもついてきてほしいなと思っています。
最後に、この言葉を残してしめましょう。

「あなたの目には、何が映ったでしょうか」
Pandora Master’s Symphony Concerto No.3

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