生きがいを持ち続ける生涯を

実は今うちの祖父母が大変なことになってて、ひと月半ほど前に祖母が倒れて救急車で運ばれて、一命はとりとめたもののもうほとんど意識が無く昏睡状態に。もう家には帰れないですよ、と宣告をうけ、祖父母2人で暮らしていたので、祖父ひとりで家にいることになってしまったんだけど、このひと月半で祖父の様子がどんどんおかしくなってしまい、あまりに見かねて「健康診断にいくよ」と病院に強制連行。アルツハイマー型認知症という診断結果。とはいえまだ初期段階だとのことだったんだけど、状態はもうあまりにもひどくて、新しいことがもうほぼ覚えられないみたいだし、ひとりで家に居続けた結果お風呂も入らないしご飯もちょっとしか食べない。ふらふらするとか言っておそらくもう栄養失調状態。掃除も洗濯も出来ず、なんと電子レンジの使い方すら知らなかったと驚き。家で出来ることといえばテレビのリモコンを操作するくらい。家のことは何もかも嫁任せだったんだなぁと。

祖父は典型的な亭主関白ガンコ親父を貫き通してきた人で、何を言っても言うことを聞いてくれないのね・・・。そして自分が認知症だと診断されたことも覚えることが出来なくて、「こんなことがあったでしょ、あーだったでしょ」と言っても「そんなのは知らない、見に覚えがない、忘れてなんかいない」と一歩も譲らない。もうまったく埒があかないので介護保険の申請を済ませ、役所の調査員が調べにくるまでの間、ヘルパーさんに来てもらおうねって説得するもやはり断固拒否。

私と私の母とで代わる代わる家に様子を見に行く日々にもううんざり・・・。
もちろん祖父は家を出たがらないし、うちや母の家に連れてきたところでストレスでこっちがどうにかなってしまうだろう・・・。様子を見に来たヘルパーさん、おそらく歴戦のベテランで、祖父の断固拒否の様子を見て早々に、それでは事務所のほうで話しましょうか、と早々に離脱。
まずは来週その役所の人が調査にくるのを辛抱強く待ちましょうってことになっていて、どうも話によるとご高齢のガンコなおじさん達は何故か役所の言うことにはすぐ折れるらしいのね。世代なのか、役所の言うことには逆らえない、そういう感覚があるのかもしれない。
そこからはおそらく手厚い介護が始まると思うので一安心かなとは思うんだけど、祖母もおそらくもう長くはないと思う。いよいよ真っ黒な礼服を新調しなきゃないだろうなと思っているところ。

なんでこんないっきに認知症が進んでしまったのかなって考えてみると、あっけなく原因の予想がついた。祖父は自営業のいわゆる社長で、10年くらい前に会社をたたんで、それからは夫婦ふたりでゆったりと暮らす日々だったんだけど、じゃぁ何をしていたのかっていうと何もしていないんだよね。あの家にはテレビと新聞しかないの。仕事が趣味みたいな人だったから、仕事をしなくなってしまったらもう何も無かったんだよね。毎日同じような日々を過ごして、どこに行くでもない、ただただスーパーと家の往復のみ。そこにどんな生きがいを見出せるのか、私には多分わからない。けどそんな暮らしをし続けて約10年。祖母が倒れて家に帰れなくなってしまう。今まで身の回りの世話、家事をしてくれて、話し相手にもなっていた祖母がいなくなってしまったことで、あの家にずっとひとりで居続けて、ついには自身の妻が入院していることも忘れてしまっていて、私に電話がかかってきたのね。「ばーばが帰ってこない、どこさいってるんだべ」と。
これで私も母もようやく気が付いたのね。おそらく認知症で、あまりにもひとりで生活が出来ない祖父であったことに。もちろんご飯食べてる?とかちょくちょく聞いてはいたんだけど「食べてる、大丈夫だ、元気だ」みたいに言っていたし。生活出来るんだなとばかり思っていたけど、それは超絶ガンコ親父のただの見栄で、実際は自立生活しているとは到底言えない状況だった。

いろいろ事情はあったのだろうけど、おそらく祖父は仕事をし続けるべき人間だったんじゃないかなと思う。技術者としては相当の腕前だったらしく、祖父はあらゆる機械の修理業をしていた。
仕事が生きがいだったんじゃないだろうか。どんなになっても機械とふれあい続けて、そして機械と共に生涯を終える、くらいのほうがよかったんじゃないだろうか。もちろん私にとってはまだまだ何十年も未来の話だから、その答えはまだ私には出せないと思う。けど今こういう経緯を経て、こういう状況になったことを客観的に考えてみると、やはり仕事、趣味、そして人と繋がる、話す、ふれあうということ。いずれも生きがいとして、どんなに老いても辞めるべきではないんじゃないだろうか、という考えに至る。

私にはある。仕事も趣味も人との繋がりも。掃除も洗濯も料理も出来る。考えたくはないけれど突然一人になってしまっても生活できる自信が今のところは完璧にある。
これらを絶対に絶やさないようにしよう、失わないようにしよう。そう強く思う機会となったのでした。

(6 投票, 平均: 1.00 / 1)
読み込み中...
(6 投票, 平均: 1.00 / 1)
読み込み中...