AI絵撲滅過激派という存在

AI絵撲滅過激派のすごい猛烈アピールポストが昨晩たまたま視界に入ったんだけど、言いたいことはわかるんだけどだいぶ短絡的というか、自分たちの仕事が奪われてイラついている人達っていう印象がまず先にきて、その先の「では何故ダメなのか」的なところで正論が繰り広げられているんだけど、本質理解が追い付いていないように思えたの。

私もだいぶAIで絵を自在に出せるスキルをもう持っているんだけど、技術を会得してかなり使い倒したからこそわかること、感じることっていうのがある。

美少女ゲームブランドのハロウィンの絵も話題にあがってきていて、AI絵なんじゃないか、と疑いがかけられて絵の校正、分析をし始める人が出てくるっていう事態。そこまでしてAI絵を潰したいのか・・・と気味が悪いなと感じてしまうほど。
確かに私が見ても、部分的にAIによって描かれた部分かな?と感じる部分はあったけど、おそらくツールとしてAIが使われた、という感じだと思う。
過激派の方々はAI要素を激しく嫌っているでしょうから、おそらく使う側の知識が無いと思うのだけど、ぶっちゃけ簡単な背景ならAIに描かせてしまったほうが圧倒的に効率がよかったりするし、気を付けて使えばバレない。
どういうことかというと、AI絵というと‎Stable Diffusionがまず筆頭で、次にChatGPT(DALL-E)とかいろいろあるけれど、背景だけを書かせたり調整目的だけで使うのであれば、今やPhotoShopに実装されている「生成塗りつぶし」機能がかなり強い。

PhotoShopの生成塗りつぶし機能
ものの数秒で対象を無かったことにできる
代わりにカエルをAIで生成し対峙させてみたw

おそらくそのハロウィンの絵も、背景にPhotoShopのこの「生成塗りつぶし」機能が使われたのではないかなと私は感じたのね。PhotoShopのサイトを見てもらえればわかるんだけど、「生成塗りつぶし」の機能は描いてほしいものをテキストで指示するだけで無限に候補を生成し続けてくれて、その中からより希望にあったものを選抜すればいい。
この時点でもうAI絵撲滅過激派は激おこプンプン丸だと思うんだけど、実はこの機能、例えば不要なものを塗りつぶす、ということにおいて非常に優秀で、例えば背景の余計な電信柱や電線、たまたま飛んでいる鳥、写り込んでしまった人、たまたま地面を歩いていたアヒル。とかくものすごく自然に不要な要素を塗りつぶしてくれる。良い候補を選びさえすれば、AI絵撲滅過激派さん達にも、もちろん使っている私にも到底見分けが付かない。
普段目にしている街の広告、POP、雑誌、グラビア写真集、テレビCM、ありとあらゆるところにもう既にこの生成塗りつぶしの機能は使われていて、もう見分けが付かないの。美しいな、可愛いな、と思った美女の写真も、最初はノーメイクで撮られていて、PhotoShopでメイクされた可能性だって十分ありえるわけよ。
こういう技術的な背景を踏まえて、使う側の知識を持つと、AI絵撲滅過激派さん達がいささか滑稽だなと思えてしまう。

まず絵をAIで生成するとき、プロンプトを入力するじゃない?でもそのプロンプト、かなりの癖があって、ほぼ思い描いていたような絵は出てこないのよ。まさしくガチャ。いや、ガチャよりも質が悪いレベル。どういうことかって、よしんば思い描いていた絵がたまたま生成されたとて、それは完璧じゃないんだよね。例えば指が6本あったりする。

その他にも技術的に難しいことがたくさんあって、SNS上で見かけるAI絵はおそらくそのほとんどが低解像度で描き出されたもので、それをアップスケーリングする工程があるのよ。
最初から綺麗で解像度の高い美しい絵が出てくるわけではないのよね。
DALL-Eに描かせるとわりと最初から良いのが出てきたりするんだけど、DALL-EはDALL-Eだな~っていう癖がわかりやすいところがあるので一長一短。

私の度重なる試行から得た生成フローなんだけど、横向きの絵を作る時はまず800×450で何百枚と生成する。様々なプロンプトで、細かくプロンプトを差し替え、時々設定数値を変えることも。この設定数値の例はネット上に既にあるけど、どれが最も良い結果を生み出せるかは、やってみないと正直まじでわからないので、何度も何度も自身で試し、実験し、経験を積む必要があるの。
設定例コピペでうまくいくなんて思わないほうがいい。
出来たそれらをよく選抜して、この時点で既に判明している崩れている部分は自ら手直しをいれる。次にGoogleColabに環境を構築して高解像度化の処理をする。最後にそれを色調補正、細かなゴミを排除して完成。最終的に4K画質程度の絵になる。このフローの中でもPhotoShopの生成塗りつぶし機能は手直しの時によく使われている。

もちろん実際にちゃんとすべて絵師さんが絵を描く時間に比べたら、数10分の1の時間で絵が仕上がるけれど、結局この出来た絵は、はたして本当に欲しかった絵かというとそうではなくて、たまたま生成された絵でしかなく、ガチャの結果。アイドル系ソシャゲは、ガチャで出たアイドルを自身のフォーメーションに加えるかどうかを考えるじゃない?そういうことよ。
生成AIで出した絵が、「使える」か「使えないか」で判断し、「使える」絵であれば自身のフォーメーションに加えるの。

ガチャで出たたくさんのコモン、ノーマルを千切っては投げ千切っては投げ。あるいは素材にしたり、売り払ったりするでしょう?
生成AIってそういうことなのよ。プロンプトだって、言い換えればまわすガチャ企画を選んでいるようなもの。
そんなコモンの絵柄だってさ、絵師さんがしっかり描いたものなのよ。それをうちらはまるでゴミのように扱い、使い捨てていないかしら?
そういうことじゃない!!と言いたいのであれば、今まで常に捨ててきたコモン達で陣営を組んで遊び倒してみなさいよって。まぁこれは少し脱線ね。

次に生成AIが、誰か絵師が実際に描いた絵を学習している、という点。多くの絵描きさん達がこれを懸念、よくは思っていないのでしょうね。わかるけれど、ひとつまず先に覚えておきたいのは、なんでもかんでも学習対象にしているわけではないってことね。
とりわけ、何かの有名なキャラクターや有名な絵師、芸能人の写真が教材として使われる。皮肉にも‎Stable Diffusionに絵を学ばせるのは人間であり、その人間は、自身が生成したいと思った画像を生成させるために、その教材をしっかり選んでいるのよ。なんでもかんでも闇雲に学習させているわけではない。‎Stable Diffusionは決して独り歩きしないの。それがもし出来るのであれば、奇形の絵なんてもうほぼ生成されないはずよ。けど今もなお指が6本以上あったり、多足、欠損、なんでもござれな絵が生成される。

どういうことかというと、‎Stable Diffusionにはチェックポイントっていうものがあって、生成したい絵を‎Stable Diffusionに与え、何度も何度も絵を生成させて、おかしな解釈、足りない要素があれば別の絵を与えてそれを加味させ、完成度を高めていく。その学習過程を記録したもの、それがチェックポイントと呼ばれるものね。モデル、とも呼ばれる。
つまりなんと皮肉なことに、自身の絵が学習されて、自分が描いてないのにまるで自分が描いたかのような絵がネット上に溢れる、ということが実際に起きる人というのは、そもそも超有名人、超有名絵師、または一世を風靡するような何か作品のキャラクターの原画さんとか。フリーレンとかがいい例かしら。フリーレンの絵を生成したい人はどうやらたくさんいるようで、チェックポイントがたくさん存在しているの。
生成AIによって自身の絵描きとしてのアイデンティティが奪われるのではないか、というのがおそらく最大の恐怖していることで、実際に使ったことがない、技術、経験がないのであればなおのこと怖いのだと思う。その結果、生成AIなんて撲滅だ!無くなってしまえばいい!という過激派にさえなる。

少しだけ安心してもいい。‎Stable Diffusionに自分の絵柄が学習され、それがネット上に流れ猛威を振るい、オリジナルである自身が蔑ろにされるといったことは、超有名になってからやっと起こり得ることなのだということ。もちろん自分で‎Stable Diffusionに食わせるということをしたとて、それを世に出すか否かは自分が決めれることだし、それならば自分の分身的に良きツールとして生成AIをこき使ってやる、ということだって考えられる。絵描きとしてのポリシー、個性を捨てるわけじゃなく、例えば何か構図、レイアウトの参考を生成AIに出させるの。ガチャ的にもしかしたら自分では思いつかない面白い構図の絵が出てくるかもしれない。それをもとに筆を握ってオリジナルの絵を描けばいい。これはすごく現代の、イマドキらしいクリエイターだと思う。

AI絵撲滅過激派の皆さんは、どこまで知っているのかしら。生成AIというのは、いわば天井の無い質の悪いガチャと同義といってもいい。知識経験さえあれば、この質の悪いガチャをただ撲滅してやろうという短絡的な考えに至ることはなく、うまく利用してやろう、こき使ってやろう、と前向きに考えることが出来るようになるのではなかろうかと。

得体のしれないよそ者が村にきて、何も理解しようとせず、話を聞こうともせずただ恐れおののき、立ち去れ!と騒ぎ立てる閉鎖的村民のようだなと、私は過激派のみなさんを見て思ったのです。

では超有名絵師の絵柄は学習されて良いというのか、という最もなご意見があると思う。もちろんそのターゲット、オリジナル、学習対象として選ばれた絵師さんは良い気分ではないのは明白だけど、少し考え方をやわらかくしてみてれば、学習されるだけの素晴らしい絵が描ける俺、っていうことであり、名誉だといってもいい。それでいて、生成AIにはスピード以外でオリジナルに勝利することはまずありえない。何故か。
超有名絵師さんは、生成AIに学習されたとて、絵師の腕前は常に向上し続け、新しい表現を生み続け、より人の心を突き動かす絵を世に出していくだろう。
フリーレン達が自身の複製体と戦闘したシーンを思い出してほしい。
複製体は所詮、オリジナルを凌駕、超えることはないんだよね。そこに「人」の心がある限り。絵も同じじゃないかしらね。

生成AIは決して怖いものではない。人にこき使われるツールであり、天井の無い質の悪いガチャである。
AIを悪だというのなら、まずどこにどれだけAIが活用されているかを見極めてみてはどうだろう。既にどれだけAIのお世話になっているのか、AIからしてみれば「身の程をわきまえろたかだか人間風情が」という感情かもしれないわよw
AIをすべてシャットアウト、撲滅した世界で生きてみればいいし、そうやって撲滅を呼び掛けているSNSも、トゥイッターがもついわばAIによって捻り出されたアルゴリズムによって操作されているのよ。なんて滑稽かしらね。

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